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先進プラズマ研究開発

トロイダル磁場コイルの通電試験

掲載日:2023年9月6日更新
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トロイダル磁場コイルはJT-60SAプラズマの閉じ込めに最も重要なものです。18個のD字型形状をしているこのコイルは25.7kAもの電流を流し、トカマクを周回する中心軸上で2.25テスラの磁場を生成するように設計されています。この時コイルに蓄えられたエネルギーは1.06ギガジュールに相当します。

8月2日に真空容器の約200度のベーキングが完了し、真空容器を50度の温度に戻した後(その際真空リークがないことを確認しています)、真空状態での耐電圧試験を行い、8月7日にトロイダル磁場コイルへの通電試験を開始しました。

最初のステップは、3kAまでの電流の立ち上げを繰り返しながらクエンチ検出器の「バランスをとる」ことでした。18個の個々のトロイダル磁場コイルの電圧は、超伝導状態の損失(クエンチとして知られる)を検出するために隣接するコイルの電圧と常に比較されます。各測定器は、抵抗の変化を検出する感度の高いブリッジ回路を使用して行われますが、コイル内の電流が変化するときに生じる誘導電圧に反応しないように注意する必要があります。

次にクエンチ検出器の総合的な機能試験が行われました。この試験ではコイルの一部を意図的に温めて超伝導を失わせ、常伝導にして試験します。その後、トロイダル磁場コイルに流す電流を徐々に増加させました。クエンチ検出の閾値に達すると、クエンチ保護回路(QPC)が作動します。これによりコイルの電源が切断され、バイパススイッチが開いて、電流を大きな抵抗器に強制的に流し込み、コイルに蓄えられた磁気エネルギーを急速に放出させます。この試験は9組のクエンチ検出器がそれぞれ正しく動作するまで繰り返されました(各組のコイルには冗長性のため2つの検出器があります)。

その後、トロイダル磁場コイルの電流を段階的に増加させながらQPCの試験を行いました。コイルの磁気エネルギーは電流の二乗に比例するため、QPC作動中に放出されるエネルギーを安全に扱えるかどうかを確認することが重要です。QPCはコイルを保護するためのバイパススイッチの他にバックアップとしてパイロブレーカーを有しているこれはバイパススイッチが故障したときに爆発物を使用して電流を遮断できるものです。8月18日にパイロブレーカーの正常動作が15kAでのQPC作動中に確認できました。

QPCの作動(または実際のクエンチ)は、突然発生する熱負荷のために極低温システムに大きな悪影響を及ぼします。そのため、高電流でのQPC運転に備えて、トロイダル磁場コイルの冷却ループをヘリウム冷凍機から一時的に切り離す試験やループ内のヘリウム圧力が上昇したときに自動弁が正しく作動し、ヘリウムを専用のタンクに放出することで圧力を逃がすかどうかを確認する試験も行われました。

トカマク装置を保護するために設計された全てのプロセスが正常に動作するかどうか確認することは試験運転において重要です。