放射光科学研究センター
水素材料科学研究グループ
グループリーダー 齋藤寛之
放射光と理論計算を活用した水素材料科学研究
エネルギーを取り出すときに地球温暖化ガスを排出せずに、かつ、様々な一次エネルギーから変換可能な水素は、カーボンニュートラルとエネルギー安全保障の両課題を解決できるエネルギーキャリアの切り札と期待されています。一方で、水素を様々な場面でエネルギーキャリアとして活用する水素エネルギー社会を実現するためには、多くの課題も残されています。私たちの研究グループでは水素エネルギー社会の実現を目指して、大型放射光施設SPring-8の放射光計測技術や理論計算を活用した水素材料科学の研究を進めています。
メンバー
齋藤 寛之 | グループリーダー(兵庫県立大学連携大学院 客員准教授) |
池田 隆司 | 上席研究員 |
高木 成幸 | 主幹研究員 |
城 鮎美 | 主任研究員 |
中平 夕貴 | 博士研究員 |
町田 晃彦 | 併任者(研究企画第一研究企画室 研究統括) |
篠本 由佳理 | 業務補助員 |
岸本 みどり | 業務補助員 |
内海 伶那 | QSTリサーチアシスタント |
曽木 崇弘 | QSTリサーチアシスタント |
守高 裕貴 | 連携大学院生(兵庫県立大学大学院理学研究科) |
長嶋 柊司 | 実習生(兵庫県立大学理学部) |
峯 悠一郎 | 実習生(兵庫県立大学理学部) |
玉野井 冬彦 | 客員研究員(京都大学高等研究院 特定教授) |
プレス発表
- 2023年7月25日 超高圧合成、添加剤が選択的物質合成の決め手に -電池材料等への応用に期待-
- 2023年1月23日 最大性能の巨大負熱膨張物質 -材料組織観察の結果を用いた物質設計-
- 2022年4月27日 量子科学技術研究開発機構-東北大学 マッチング研究支援事業の採択課題が決定 次世代放射光利用研究を両機関の最先端の技術により推進
- 2022年4月7日 光と加熱で、金属と絶縁体を行ったり来たり -高性能な光応答イットリウム化合物薄膜を世界で初めて作製-
- 2021年12月11日 世界初!元素種を識別して材料のミクロ構造を解析するノイズ耐性の高い新解析法を開発 ―将来的なデバイス材料のミクロ構造研究に活路を開く―
- 2021年09月29日 巨大負熱膨張のメカニズムを解明 -さらなる新材料の設計に道を拓く-
- 2021年07月29日 希少な元素を使わずにアルミニウムと鉄で水素を蓄える ―水素吸蔵合金開発の新たな展開を先導―
- 2020年03月26日 コバルト酸鉛のスピン状態転移、電荷移動転移を発見—負熱膨張材料などへの応用に期待—
- 2019年11月28日 新材料の‟温めると縮む”効果、2つのメカニズムの同時発生で高まることを発見―精密位置決めが必要な工程に対応―
- 2019年09月30日 単色X線とナノ粒子による新規放射線がん治療に向けて オージェ電子発見から100年、新境地を開く
- 2019年06月14日 2つの起源で“温めると縮む”新材料を発見―精密な位置決めが必要な工程に対応―
- 2017年01月26日 数万気圧極低温下での単結晶X線結晶構造解析に成功! ~圧力下新奇物性解明に光~
- 2017年10月27日 物理的圧力と化学的圧力の組み合わせにより、新しい鉄系高温超伝導体を発見
- 2017年01月13日 1つの金属原子に9つもの水素が結合した新たな物質の誕生
- 2015年10月09日 東工大研究チームら、クロム酸鉛の「価数の謎」を解き明かす(原子力機構のページへ)
- 2014年09月26日 鉄に溶けた水素はどこにいる?(原子力機構のページへ)
- 2013年05月19日 アルミニウムを主原料とする新しい水素貯蔵合金の合成に成功(原子力機構のページへ)
- 2012年05月07日 岩塩(NaCl)構造をもつレアアースメタルの水素化物を発見(原子力機構のページへ)
- 2011年07月05日 希土類金属水素化物の結晶構造の一般則を確立(原子力機構のページへ)
- 2011年06月15日 温めると縮む新材料を発見(原子力機構のページへ)
トピックス
- 2019年09月03日 相図の裏に隠されていた新しい鉄水素化物を発見
研究内容
- 放射光二体分布関数法で見る物質中のナノスケール構造(綿貫) [PDFファイル/1MB]
- 放射光その場観察を利用した新規水素化物の高温高圧合成(齋藤) [PDFファイル/960KB]
- 放射光・中性子を利用した金属水素化物の高圧力下構造研究(町田) [PDFファイル/1.75MB]
- 核融合炉用SiC/SiC-W接合材における界面近傍の反応相評価(安田) [PDFファイル/1.52MB]
- 放射光を利用した金属材料内部応力・ひずみ評価(城) [PDFファイル/2.17MB]
知財マップ
- 水素貯蔵合金のサイクル劣化にかかわる構造的因子の特定(町田)
- 高温高圧法を利用した新規水素貯蔵材料の探索(齋藤)
- 高温高圧水素と金属の反応(齋藤)
- 白色X線を利用した鉄鋼材料の局所応力・ひずみ分布測定(城)
- 鋼板内部の応力分布測定(城)
- ナノ粒子や材料中のナノ構造の原子配列観察(綿貫、町田)
装置
関西研だより
- 2023年8月 超高圧合成、添加剤が選択的物質合成の決め手に ー電池材料等への応用に期待 ー (P.2)
- 2023年3月 第21回マテリアル戦略総合シンポジウム (P.2)
- 2022年10月 兵庫県立大学創立10周年・創基85周年記念事業成績最優秀者奨学金に採択 (P.8), 播磨高原東中学校出前授業 (P.10)
- 2022年9月 第6回SPring-8秋の学校にQST放射光科学研究センターの研究員3名が講師として貢献(P.2), 量子科学技術でつくる未来 未来のクルマ 第4回 水素貯蔵を低コスト化 (P.6)
- 2022年8月 マテリアル先端リサーチインフラ学生研修プログラム(P.4)
- 2022年7月 令和4年度理事長表彰で特賞を受賞(P. 6)
- 2022年4月 光と加熱で、金属と絶縁体を行ったり来たり -高性能な光応答イットリウム化合物薄膜を世界で初めて作製-(P. 4)
- 2022年3月 ブラッグコヒーレントX線回折イメージング法を用いた微小結晶ひと粒の3次元イメージング2(P. 2), 令和3年度関西光科学研究所 所長表彰(P. 5)
- 2022年2月 放射光を利用した新しい金属水素化物の合成研究 (P. 6)
- 2021年12月 世界初!元素種を識別して材料のミクロ構造を解析するノイズ耐性の高い新解析法を開発 ―将来的なデバイス材料のミクロ構造研究に活路を開く― (P. 4), 放射光利用研究で二件連続若手発表賞受賞の快挙 日本高圧力学会第62回高圧討論会 ポスター賞受賞 日本金属学会 水素化物に関わる次世代学術・応用展開研究会 優秀若手表彰受賞 (P. 6)
- 2021年11月 日本高圧力学会第62回高圧討論会シンポジウム- 高圧科学と水素 -、- 放射光X線を用いた高圧科学の現在 - 報告 (P. 4)
- 2021年10月 巨大不熱膨張のメカニズムを解明 - さらなる新材料の設計に道を拓く - (p. 5)
- 2021年09月 ハイドロジェノミクス第8会若手育成スクール開催報告 (p.7), 第28回QST播磨セミナー (p. 8)
- 2021年08月 希少な元素を使わずにアルミニウムと鉄で水素を蓄える ―水素吸蔵合金開発の新たな展開を先導― (p. 2)
- 2021年08月 ナノテクノロジープラットフォーム学生研修プログラム (p. 3)
- 2020年06月 コバルト酸鉛のスピン状態転移、電荷移動転移を発見 —負熱膨張材料などへの応用に期待—(p.4)
- 2019年12月 負熱膨張材料で更に新たな進展:新材料の ‟温めると縮む”効果、 2つのメカニズムの同時発生で高まることを発見(p.5)
- 2019年11月 2つの起源で“温めると縮む”新材料を発見 ―精密な位置決めが必要な工程に対応 ―(p.4)
- 2019年10月 単色X線とナノ粒子による新規放射線がん治療に向けて オージェ電子発見から100年、新境地を開く(p.2)
- 2019年09月 相図の裏に隠されていた六方格子構造の鉄水素化物(p.11)
- 2018年10月 水素ガス雰囲気下でのその場測定の実現(p.8)
- 2018年01月 数万気圧極低温下での単結晶X線結晶構造解析に成功! ~圧力下新奇物性解明に光~(p.7)
- 2017年03月 1つの金属原子に9つもの水素が結合した新たな物質の誕生(p.5)
- 2016年12月 放射光を利用した金属材料内部応力・ひずみ評価(p.7)
- 2016年10月 圧して知るべし 圧してビックリ!(p.7)
- 2016年10月 水素を蓄える軽い材料を探す(p.6)
成果リスト
原著論文
- Polar-Nonpolar Transition Type Negative Thermal Expansion with 11.1% Volume Shrinkage by Design, Takumi Nishikubo, Takashi Imai, Yuki Sakai, Masaichiro Mizumaki, Shogo Kawaguchi, Norihiro Oshime, Ayumu Shimada, Kento Sugawara, Kenji Ohwada, Akihiko Machida, Tetsu Watanuki, Kosuke Kurushima, Shigeo Mori, Takashi Mizokawa and Masaki Azuma, Chemistry of Materials, 35, 870-878, 2023
- In situ synchrotron radiation X-ray diffraction measurements of Fe–Mo alloy hydrides formed under high pressure and high temperature, Reina Utsumi, Masahiro Morimoto, Hiroyuki Saitoh, Tetsu Watanuki, Toyoto Sato, Shigeyuki Takagi, Shin-ichi Orimo, Journal of Alloys and Compounds, 893, 162300, 2021.
- Hydrogen storage by earth-abundant metals, synthesis and characterization of Al3FeH3.9, Hiroyuki Saitoh, Toyoto Sato, Mai Tanikami, Kazutaka Ikeda, Akihiko Machida, Tetsu Watanuki, Tomitsugu Taguchi, Shunya Yamamoto, Tetsuya Yamaki, Shigeyuki Takagi, Toshiya Otomo, Shin-ichi Orimo, Materials & Design, 208, 109953, 2021.
- Iodine containing porous organosilica nanoparticles trigger tumor spheroids destruction upon monochromatic X-ray irradiation: DNA breaks and K-edge energy X-ray, Yuya Higash, Kotaro Matsumoto, Hiroyuki Saitoh, Ayumi Shiro, Ma Yue, Mathilde Laird, Shanmugavel Chinnathambi, Albane Birault, Tan Le Hoang Doan, Ryo Yasuda, Toshiki Tajima, Tetsuya Kawachi, Fuyuhiko Tamanoi, Scientific Reports, 11, 14192, 2021.
- Bragg coherent diffraction imaging allowing simultaneous retrieval of three-dimensional shape and strain distribution for 40–500-nm size particle, Norihiro Oshime, Kenji Owada, Kento Sugawara, Tomohiro Abe, Reiji Yamauchi, Tetsuro Ueno, Akihiko Machida, Tetsu Watanuki, Shintaro Ueno, Ichiro Fujii, Satoshi Wada, Ryota Sato, Toshiharu Teranishi, Miho Yamauchi, Kenji Ishii, Hidenori Toyokawa, Koichi Momma, Yoshihiro Kuroiwa, Japanese Journal of Applied Physics (Special Issues: Ferroelectric Materials and Their Applications), 60, SFFA07, 2021.
- Hydrogenation reaction of Co3Ti alloy under high pressure and high temperature, Hiroyuki Saitoh, Masahiro Morimoto, Tetsu Watanuki, Toyoto Sato, Shigeyuki Takagi, Shin-ichi Orimo, International Journal of Hydrogen Energy, 45, 33675 - 33680, 2020.
- Crystal and Magnetic Structures of Double Hexagonal Close-Packed Iron Deuteride, Hiroyuki Saitoh, Akihiko Machida, Riko Iizuka-Oku, Takanori Hattori, Asami Sano-Furukawa, Ken-ichi Funakoshi, Toyoto Sato, Shin-ichi Orimo, Katsutoshi Aoki, Scientific Reports, 10, 9934, 2020.
- Neutron diffraction study on the deuterium composition of nickel deuteride at high temperatures and high pressures, Hiroyuki Saitoh, Akihiko Machida, Takanori Hattori, Asami Sano-Furukawa, Ken-ichi Funakoshi, Toyoto Sato, Shin-ichi Orimo, Katsutoshi Aoki, Physica B, 587, 412153_1 - 412353_6, 2020.
- Destruction of tumor mass by gadolinium-loaded nanoparticles irradiated with monochromatic X-rays: Implications for the Auger therapy, Kotaro Matsumoto, Hiroyuki Saitoh, Tan Le Hoang Doan, Ayumi Shiro, Keigo Nakai, Aoi Komatsu, Masahiko Tsujimoto, Ryo Yasuda, Tetsuya Kawachi, Toshiki Tajima, Fuyuhiko Tamanoi, Scientific Reports , 9, 13275_1 - 9, 2019.
解説記事
- アルミニウムと鉄で水素を蓄える, 齋藤寛之, クリーンエネルギー, 31, 28-34, 2022.
- アルミニウムと鉄の合金を使って水素を貯える -中性子と放射光を利用した新しい水素化物探索研究, 齋藤寛之, 中性子産業利用推進協議会季報「四季」, 54, 13 - 18, 2022.
- 希少な元素を使わずにアルミニウムと鉄で水素を蓄える, 齋藤寛之, SPring-8/SACLA利用者情報, 27巻1号 2022.
- 放射光を利用した新規水素化物の高温高圧合成研究, 齋藤 寛之, 町田 晃彦, 佐藤 豊人, 高木 成幸, 折茂 慎一, セラミックス, 56(2), 68 - 71, 2021.
- 単色X 線とナノ粒子を組み合わせた新しいがん治療技術の開発にむけて, 玉野井 冬彦, 松本 光太郎, 齋藤 寛之, 城 鮎美, Isotope News, 770, 7 - 11, 2020.
外部資金
- 2023~2027年度 科学技術振興機構 革新的GX技術創出事業(GteX) 水素領域 高密度・高耐久・低コスト化を実現する水素貯蔵システムの開発 「革新水素貯蔵 -水素反応の精密解析とデジタル技術の援用-」解析グループリーダー 齋藤
- 2024~2025年度 日本学術振興会 科学研究費助成事業 若手研究 アルミニウム-鉄水素化物の水素吸蔵放出性能向上に向けた構造ユニットのサイズ制御 研究代表者 中平
- 2023~2025年度 日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B) 極低温イオン輸送への挑戦 研究代表者 高木
- 2023~2025年度 日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B) 酸素と炭素が共創する窒化ホウ素の気相成長プロセスと光機能 分担 高木
- 2023~2025年度 日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
単色X線と微小平行ビームを組み合わせた、新たながん細胞破壊のための挑戦的研究 研究代表者 城 - 2022~2024年度 日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B)
アルミニウムー遷移金属薄膜の大気からの水素吸蔵メカニズム 研究代表者 齋藤 - 2021~2022年度 日本学術振興会 科学研究費助成事業 若手研究
放射光を利用した新規がん治療技術におけるがん殺傷メカニズムの解明 研究代表者 城 - 2020~2022年度 日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(A)
単色X線とナノ粒子を用いたがんの新規放射線治療 分担 齋藤 研究協力者 城 - 2018~2022年度 文部科学省 科学研究費助成事業 新学術領域研究(研究領域提案型)
ハイドロジェノミクス:高次水素機能による革新的材料・デバイス・反応プロセスの創成
放射光利用研究と水素化物の高温高圧合成研究を主として参画しました。
A01分担 齋藤、A05-1分担 町田 - 2013~2017年度 文部科学省 国家課題対応型研究開発推進事業 光・量子科学研究拠点形成に向けた基盤技術開発「光・量子融合連携研究開発プログラム」
エネルギー貯蔵システム実用化に向けた水素貯蔵材料の量子ビーム融合研究
町田が研究代表として実施しました。 - 2013~2017年度 日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(S)
高密度水素化物の材料科学-水素の結合自由度を利用したハイドライド・ギャップの克服-(代表:東北大学 折茂慎一教授) 齋藤が研究分担者として参画しました。